東京の伝統行事

神田祭神田明神(神田神社)は、東京都千代田区の、JR・東京メトロ丸ノ内線の御茶ノ水駅から北へ徒歩5分の地に位置する鎮守社。当社についての詳細は神田明神の記事を参照。
その例大祭である神田祭は、東京の代表的な寺社祭礼の一つ。

神田明神
スポットガイド
神田明神 | 東京都千代田区
江戸の総鎮守
5月の行事
東京23区の歳時記
5月の行事
徐々に始まる下町の神輿

神田祭

神田明神の神田祭は、神社側では日本三大祭の一つかつ江戸三大祭の一つだと称している。江戸時代は江戸城内に祭礼行列が練りこみ、将軍らの上覧があったため天下祭とされ、同じく天下祭であった赤坂日枝神社の山王祭とは交互に催された。現在でも祭礼行列は、神田祭は西暦奇数年、山王祭は西暦偶数年に催されている。

山王祭
イベントガイド
赤坂日枝神社 山王祭 | 東京都千代田区
6月 - 天下祭とされた祭礼

本祭の年(西暦奇数年)、神田祭は数日間に渡って開催されるが、そのハイライトは土曜日に催される鳳輦・宮神輿の神幸祭と、その翌日曜日に行われる町神輿の大規模な宮入である。

露店
神田祭

神社境内及び周辺には露天商が多数出店する。

加茂能人形山車
神田祭

境内に展示されている加茂能人形山車は魚河岸会の所有で、関東大震災で焼失した山車を昭和30年に復元したもの。

桃太郎人形山車
神田祭

同じく展示されている桃太郎人形山車は岩本町二丁目岩井会の所有。山車本体は昭和9年、桃太郎人形は昭和11年の製作。

鳳輦・宮神輿の神幸祭

土曜日に行われる神幸祭は、祭神の神霊を乗せた鳳輦・宮神輿の神幸祭行列が、氏子地域を終日巡行する。

鳳輦・宮神輿

鳳輦・宮神輿は土曜朝に神社を発輦し、神田・日本橋・大手町・丸の内・秋葉原などの108ヶ町30kmを練り歩き、夕刻に神社に還御する。行列の構成及び順路は、午後に参加する附け祭以外は、毎回ほぼ同じである。
また途中、神田明神の旧地である将門首塚では「奉幣の儀」を、両国旧御仮屋(薬研堀不動院境内)では「昼御饌」を行う。

諌鼓山車
神田祭
獅子頭山車
神田祭
先導騎馬神職
神田祭
宮司馬車
神田祭
区長の馬車
神田祭
一之宮鳳輦
神田祭

大己貴命が乗る一之宮鳳輦は昭和27年製作。

御胡簶
神田祭
二之宮神輿
神田祭

少彦名命が乗る二之宮神輿は昭和48年製作。

騎馬神職
神田祭
真榊
神田祭
三之宮鳳輦
神田祭

平将門命が乗る三之宮鳳輦は昭和59年製作。入母屋屋根で鰹木も乗る。

附け祭

附け祭は相馬野馬追騎馬武者やバルーン山車などで、午後より行列の後ろに合流する。参加する団体やバルーン山車や順路は、年により変動する。

相馬野馬追騎馬武者
神田祭
 
神田祭

福島県相馬市の相馬野馬追い神事の騎馬武者は、平将門が相馬氏の遠祖である縁で附け祭に参加する。これは近年は毎回参加している。

浦島太郎
神田祭
花咲か爺さん
神田祭
大江山凱陣
神田祭
大鯰と要石
神田祭

神幸祭中の神社境内での奉納行事

神幸祭行列が氏子地域を巡行している間、神田明神境内でも様々な奉納行事が行われる。

長唄
神田祭

長唄は江戸で発展した芸能。

神田囃子
神田祭

神田囃子は、葛飾区葛西神社で始まった葛西囃子が江戸時代に当地で発展したもの。葛西囃子とともに「江戸の祭囃子」として東京都指定無形民俗文化財

雅楽
神田祭
獅子舞
神田祭
浦安舞
神田祭

浦安舞や豊栄舞といった定番の巫女舞も奉納される。

江戸蕎麦打ち実演
神田祭
和太鼓フェスティバル
神田祭

隣の宮本公園では、土曜と日曜の二日間に渡って、様々な団体が和太鼓を終日披露する。

神田祭神幸祭のルート

下のボタンをクリックすると表示される地図(グーグルマップ)上の朱線が神幸祭本隊の順路で、青線が附け祭の順路。見所は16:30頃の日本橋三越の前だとされている。

町神輿の宮入

土曜日夕刻及び日曜日終日、氏子108ヶ町の町神輿の宮入りが行われる。なお、宮入ルート、参加町会、宮入予定時間は毎回ほぼ同じである。

土曜日
宮入予定時間(2023年)
魚河岸会の宮入

魚河岸会は神田明神の境内社である水神社の崇敬団体。江戸時代から関東大震災までは、鮮魚の卸売市場である魚河岸は日本橋にあった(築地市場を経て現在は豊洲市場)。
2023年は、珍しくこの水神社の宮神輿が神田祭に参加(人形山車は以前から境内に展示されていた)。

日本橋三・五地区連合の連合宮入

日本橋三地区連合は地下鉄の人形町駅・水天宮前駅付近の5町会の、日本橋五地区連合は都営新宿線浜町駅付近の10町会の町神輿が参加。
日本橋三地区連合のうち1町会は単独で宮入するが、他の4町会は日本橋五地区連合の3町会と連合で、より遅い時間帯に宮入する。

日曜日
宮入予定時間(2023年)
外神田地区連合の連合宮入

外神田地区連合は秋葉原電気街一帯の12町会の町神輿が参加。日曜日に明神下より出発して連合宮入する。

外神田地区連合
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
 
神田祭

宮入の順番待ちのため、鳥居の前には神輿の待機列ができる。

岩本町・東神田地区連合の連合宮入

岩本町・東神田地区連合は都営新宿線岩本町駅周辺の7町会の町神輿が参加。日曜日に岩本町交差点より出発して連合宮入する。

岩本町・東神田地区連合
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
神田松枝町会の羽衣人形山車
神田祭
 
神田祭

神田松枝町会の羽衣人形山車は宮入り後、社殿前で人形が屈んだり回転したりするパフォーマンスを見せる。

神田中央連合の連合宮入

神田中央連合は神保町駅南東の10町会の町神輿が参加。日曜日に神田警察署近くより出発して連合宮入する。

 
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
中神田十三町会連合の連合宮入

中神田十三町会連合はJR神田駅西側の12町会の町神輿が参加。日曜日に神田運転免許更新センター近くより出発して連合宮入する。

 
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
神田駅東地区連合の連合宮入

神田駅東地区連合はJR神田駅東側の6町会の町神輿が参加。うち1町会は土曜日夕刻に単独で宮入し、残り5町会は土曜日に旧今川中学校より連合宮入する。

 
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
秋葉原東部地区連合の連合宮入

秋葉原東部地区連合はJR秋葉原駅の東方にある5町会の町神輿が参加。日曜日に和泉公園近くより出発して連合宮入する。

 
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
江戸神社宮神輿の宮入

江戸神社宮神輿(旧神田市場神輿)は秋葉原より宮入する。単独の神輿では一番注目度が高い。2023年は無し。

 
神田祭
 
神田祭
 
神田祭

宮入以外の町神輿の連合渡御

町神輿は宮入のほか、各自の地元でも巡行を行う。その際、地元においても連合渡御を行う地区もある。

日本橋四地区連合の連合渡御

日本橋四地区連合の町会は土曜日夕刻と日曜夕刻に分かれて宮入を行うが、土曜日の昼頃には、神幸祭の通過後にJR東日本橋駅付近で、連合渡御を行う。

外神田地区連合の連合渡御

日曜日、宮入りを終えた外神田地区連合の町神輿は、おまつり広場(秋葉原電気街の大通り)にて連合渡御を行う。2023年は無し?

 
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
日本橋三地区連合の連合渡御

日本橋三地区の5町会の町神輿は土曜日には二手に分かれて宮入を行うが、日曜日には合同で、人形町から水天宮方面へと連合渡御を行う。

日本橋五地区連合の連合渡御

日本橋五地区連合では、10町会のうち3町会が、日本橋三地区とともに土曜日に連合宮入を行うが、他の7町会は宮入を行わない。しかし日曜日には、10町会の町神輿が揃い、浜町駅・明治座付近で連合渡御を行う。

例大祭

祭祀として最重要なのは5月15日に固定して執り行われる例大祭で、献饌、宮司の祝詞奏上、神社本庁献幣使の献幣、氏子らの玉串拝礼ののち、里神楽と明神胡蝶の舞が奉納される。

社殿への行列
神田祭
 
神田祭
 
神田祭
里神楽
神田祭
明神胡蝶の舞
神田祭

江戸三大祭・日本三大祭

江戸三大祭の組み合わせとして最も一般的に流布しているのは以下のパターンである。

山王祭
イベントガイド
赤坂日枝神社 山王祭 | 東京都千代田区
6月 - 天下祭とされた祭礼
富岡八幡宮 深川八幡祭
イベントガイド
富岡八幡宮 深川八幡祭 | 東京都江東区
8月開催の、東京で有数の祭礼

この組み合わせは神田明神、赤坂日枝神社、富岡八幡宮の各社も主張している。しかし根津神社の例大祭浅草神社の三社祭が組み合わされることもある。根津神社は天下祭(1714年の一度だけ天下祭となった)繋がりで、神田祭と山王祭とで江戸三大祭だとする。また『全国神社名鑑』の浅草神社の項では三社祭・深川八幡祭・神田祭が江戸三大祭だと記す。ただしいずれの組み合わせパターンでも、神田祭だけは必ず組み入れられている。
一方、日本三大祭に関しては、神田明神では京都の祇園祭、大阪の天神祭と神田祭とで日本三大祭だとしている。一方、赤坂日枝神社は神田祭の代わりに自社の山王祭を入れ、京都の祇園祭、大阪の天神祭と山王祭とで日本三大祭だとしている。

根津神社 例大祭
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根津神社 例大祭 | 東京都文京区
9月 - 4年毎に宮神輿が渡御
浅草神社 三社祭
イベントガイド
浅草神社 三社祭 | 東京都台東区
5月 - 全国的に有名な神輿の祭り

神田祭の歴史

神田大明神御祭図(歌川国輝、19世紀)
神田祭

神田明神の例祭日は、延慶2年(1309年)に当社に将門の霊が合祀され神田明神と改称されたとき以来、旧暦9月15日と決まっていた。江戸初期の元和年間(1615-1624年)までは船渡御だったとされる。江戸時代は山車を主体とする祭礼で、江戸城内に祭礼行列が練りこみ、将軍・大名・大奥らの上覧があったことから山王祭と共に天下祭と呼ばれていた。江戸時代は京橋以北が氏子地域であった(明治期に日本橋川以北に)。
明治に入ってからも、陰祭は5月15日となったものの、本祭は旧暦9月15日に催されていたが、明治17年の祭礼時に台風で多数の死者を出したことなどから、明治25年に新暦の5月15日に移行した。しかし明治31年には渡御・山車巡行は5月に残したうえで、例大祭自体は9月に戻された。また明治20年代からは電線の整備が山車の運行に支障をきたし、神輿に移行していった。
戦後は、昭和23年から例大祭自体も5月に移行し、同27年に神幸祭が再開されるとともに町神輿の連合宮入が初めて行われた。その後、神幸祭にかける日数も次第に縮減し、戦前は10日前後もかけていた時期もあったが、昭和52年以降は一日で回る。

江戸期神田祭の模型(江戸東京博物館)
神田祭
神田明神(神田神社)
東京都千代田区外神田2-16-2 地図
アクセス:JR中央線・東京メトロ丸ノ内線 御茶ノ水駅より徒歩5分
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千代田区 北部、江戸城跡
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徐々に始まる下町の神輿