東大の沿革
明治9年、本郷にまず東京医学校（幕府の医学所の後身）が移転。翌10年に東京開成学校（幕府の開成所の後身）と合併し、ここに東京大学が成立した。
明治18年には東京法学校を、翌19年には工部大学校も統合して帝国大学と成り、明治23年には東京農林学校を統合。明治30年の京都帝国大学の開学に伴い、東京帝国大学と改称した。
ただ、当時の校舎の多くは大正12年の関東大震災で失われ、現存する建物は少ない。戦後は、学制改革で第一高等学校が統合されて教養学部となり、校名も東京大学となった。
東京大学 本郷・弥生・浅野キャンパスの概要
本郷キャンパスの敷地は、江戸期は加賀藩主前田家の上屋敷（ただし附属病院の敷地は加賀藩支藩だった富山藩及び大聖寺藩の藩邸跡）で、その遺構として赤門（国重文）と三四郎池が残る。
関東大震災前の校舎はその多くが倒壊し、その後、主に内田祥三によりゴシック様式の統一的な校舎群が建造され、町並みのようになっている。また、旧前田侯爵家の敷地も取得し、その庭園が国名勝となっている。
弥生キャンパスは、本郷キャンパスの北隣に、言問通り（通称ドーバー海峡）を隔てて位置する。江戸期は水戸藩主徳川家中屋敷などであった。
関東大震災まではここには旧制第一高等学校（東大教養学部の前身）があったが、駒場にあった東京帝国大学農学部と敷地を交換して農学部が移転し、ここにも内田祥三による校舎が建てられていった。
本郷キャンパスから道を数本隔てた浅野キャンパスは昭和16年に取得された。戦前の校舎は残らないが、国指定史跡の弥生二丁目遺跡がある。
本郷地区の江戸期の遺構
東大の本郷キャンパスの敷地は、江戸時代は加賀藩主前田家上屋敷であった。
赤門は国指定重要文化財。左右の繋塀と離番所付きで、それらとは別に左右の袖塀が附指定されている。
前田家上屋敷における御守殿（徳川将軍家の娘の、嫁ぎ先での御殿）の門として1827年に建造された。
育徳園心字池は1638年頃に前田家上屋敷に造られた庭園で、当時は名園とされていた。
夏目漱石の「三四郎」以来、三四郎池と通称されるようになった。
また、この池に対し、東大駒場キャンパスの池を一二郎池と俗称する。
本郷地区の明治期～関東大震災前の遺構
明治9年の東京医学校の本郷移転後、校名は東京大学、帝国大学、東京帝国大学と変遷し、大正12年に関東大震災を迎えた。
当時の校舎の多くは震災で倒壊し、現存する物は少ない。
旧附属病院発電所は明治43年頃の煉瓦造。その前はゴミ捨て場となっている。
本郷正門及び門衛所は明治45年竣工で国登録有形文化財。設計は伊東忠太。
門扉などは昭和63年にレプリカに交換された。
西側正面の長大な煉瓦塀も、正門南側から赤門の間は明治30年代の、正門北側は明治末期の竣工。
コミュニケーションセンターは明治43年竣工。旧附属図書館製本所。
伊藤国際学術研究センターのレストラン棟は、大正5年竣工の旧史料編纂掛書籍庫を改装。
理学部化学東館は大正4年竣工。旧理科大学化学館。
初期のRC造建築。
ベルツ像・スクリバ像は明治40年建立。
東大には銅像も多いが、震災前の銅像で周囲の構造物も含めて立派なのはこれ。
本郷キャンパス南端は旧加賀藩主家前田侯爵家の邸宅であったが、昭和元年に敷地を駒場と交換取得。
旧前田家の邸宅自体は第二次大戦で焼失したが、明治40年頃築かれた庭園は残り、懐徳館庭園として国指定名勝となっている。
なお、邸宅跡に立つ和風の懐徳館は昭和26年竣工。
このほかの震災前の建物の遺構としては、旧医学部薬局（明治45年）の煉瓦基礎や、旧前田侯爵邸洋館（明治40年）の煉瓦基礎がキャンパス内に展示されている。
また、東京医学校本館の前半部が小石川植物園の隣に東大博物館の分館として移築現存する。
本郷地区の震災後～太平洋戦争期の遺構
大正12年の関東大震災で校舎の多くは倒壊し、震災後、多くの校舎が内田祥三の設計で再建された。
安田講堂（大講堂）は大正14年竣工。国登録有形文化財。
工学部列品館は大正14年竣工。国登録有形文化財。
成果物等？を展示予定で建造されたが、実際は展示されなかったと考えられる。
法学部3号館は昭和2年竣工。国登録有形文化財。
法文1号館の西側は昭和4年の、全体は昭和10年の竣工。国登録有形文化財。旧法文経教室1号館。
法文2号館は昭和3年竣工で国登録有形文化財。旧法文経教室2号館。
総合図書館は昭和3年竣工。
北面の総合図書館を含む一塊の建物は図書館団地と総称される。
西面は史料編纂所、東面は情報学環・学際情報学府が入り、南面は教育学部。
昭和3年に完成したのは団地の北半分と西側の南半分で、竣工時に西側の南半分には史料編纂掛（翌年に史料編纂所と改称）が入った。
その他の部分は戦後で、昭和27年に第一期が竣工し、同58年に完成した。
総合図書館前の噴水も図書館とともに建造された。
法学政治学系総合教育棟に隣接する休憩所は、昭和3年にはすでにあった。
育徳堂（弓道場）は昭和10年竣工。
七徳堂（柔剣道場）は昭和13年竣工。東京都選定歴史的建造物。
医学部本館（2号館）は昭和11年竣工。
医学部1号館は昭和6年竣工。
理学部2号館は昭和9年竣工。
龍岡門の門柱とその門衛所（門の左側）は昭和8年竣工。東京都選定歴史的建造物。
門の右側に見えるのは広報センター。
広報センターは大正15年竣工。東京都選定歴史的建造物。旧附属病院外来患者夜間診療所。
御殿下記念館のエントランス部は昭和8年竣工。
工学部3号館は平成25年に建て替えられたが、低層に前代の工学部3号館（昭和14年竣工）の外観が再現された。
弥生門の門柱および門衛所は昭和12年竣工。東京都選定歴史的建造物。
弥生キャンパスではなく本郷キャンパスにある。
工学部13号館は昭和5年竣工。
工学部2号館の旧館は大正13年竣工。2号館の北側は取り壊され、残った南側（現・旧館）の上に高層階が建設された。
工学部4号館は昭和2年竣工。
工学部6号館は昭和15年竣工。
工学部1号館は昭和10年竣工。国登録有形文化財。
工学部船舶試験水槽室は昭和12年竣工。
工学部5号館裏（北側）には、細々とした近代建築が並ぶ。
池之端門の門柱および門衛所の建設年は未確認だが、明らかに戦前のもの。
附属病院の管理・研究棟は昭和9年竣工。旧病院事務室・薬局・外来患者診療所。
附属病院の臨床研究棟西は昭和3年竣工。旧内科病室。
附属病院の臨床研究棟東は昭和3年竣工。旧伝染病室。
附属病院臨床研究棟北は、主に構外にその姿を現している。
旧暖房汽罐室及び洗濯所。建設年代は未確認だが、おそらく戦前。
壁面は一部張り替えられている。
附属病院臨床研究棟北に隣接する環境安全研究センターも、主に構外にその姿を現している。
旧汚物焼却場。建設年代は未確認だが、おそらく戦前。
附属病院の南研究棟は大正14年竣工。旧耳鼻咽喉科・整形外科病室。
医学部4号館は、南研究棟の裏にある、その別棟のような建物。
昭和11年に脳研究室がここに設立されたので、それ以前の竣工。
古市公威像は昭和12年建立。
濱尾新像は昭和7年建立。この時期の銅像で周りの構造物含め立派なのはこの2像。
本郷キャンパス南東部、つまり病院の南東部の塀。
本郷キャンパス北東部、つまり工学部13号館等の裏の、弥生門へと続く塀は昭和初期の竣工。
古くないかも。
このような昭和初期のものと思われる掲示板が、正門前に2基ある。
本郷地区の第二次大戦後の建築
著名建築家による戦後の建築を幾つか紹介。
共に丹下健三設計。本部庁舎は1979年、第二本部棟（旧理学部5号館）は1976年竣工。
山上会館は前川國男設計で1985年竣工。
法学政治学系総合教育棟は槇文彦設計で2004年竣工。
大学院情報学環の福武ホールは安藤忠雄設計で2008年竣工。
大学院情報学環のダイワユビキタス学術研究館は隈研吾設計で2014年竣工。
弥生キャンパス
弥生キャンパス（農学部）は本郷キャンパスの北隣に、言問通り（通称ドーバー海峡）を隔てて位置する。
江戸期は水戸藩主徳川家中屋敷などがあった。
関東大震災まではここには旧制第一高等学校（東大駒場Iキャンパスにある東大教養学部の前身）があったが、駒場にあった東京帝国大学農学部と敷地を交換して農学部が移転し、ここにも内田祥三による校舎が建てられていった。
農正門の門柱、門衛所および農学資料館は昭和12年竣工。東京都選定歴史的建造物。
左から農学資料館（旧車庫）、農正門、農正門守衛所。
農学部1号館は昭和12年竣工。
農学部2号館は昭和11年竣工。
農学部3号館は昭和16年竣工。東京都選定歴史的建造物。
野球場観覧席ダッグアウト及びフェンスは昭和12年竣工。国登録有形文化財。
弥生キャンパスもまた、昭和初期の建造と思われる塀で囲まれている。
このような昭和初期のものと思われる掲示板が、農正門前に2基ある。
朱舜水記念碑は明治45年建立で東京都指定旧跡。
朱舜水は水戸光圀が師事した亡命儒学者で、この水戸藩主徳川家の中屋敷が終焉の地となった。
浅野キャンパス
浅野キャンパスは本郷キャンパスから東へ数本道を隔てたキャンパス。
江戸期はここも水戸藩主徳川家中屋敷の範囲内であった。
戦前に東大に取得された敷地だが、当時の建物は残らない。
しかし構内には、貝塚と弥生土器が発見されて国指定史跡となった弥生二丁目遺跡がある。
なお、明治17年に弥生土器（初発見地が弥生町なので弥生土器）が初めて発見された向ヶ岡貝塚は、現在の東大の弥生または浅野キャンパスのどこかにあったのだが、正確な位置は現在では不明となっている。
