待乳山聖天(本龍院)
待乳山聖天(本龍院)は、東京都台東区の、浅草駅(東京メトロ銀座線・都営浅草線・東武スカイツリー線)より北東へ徒歩11分の地にある、浅草寺の支院。
推古天皇3年(595年)に当地に金龍が舞い降りたのが先触れで、同9年(601年)、旱魃に苦しむ当地に十一面観音菩薩の化身である大聖歓喜天が出現したのでそれを祀ったと伝える。仏教寺院とは言え天部の神(大聖歓喜天)を祀っている寺なので、性格はかなり神道の神社に近い。
銅製の宝篋印塔は江戸時代中期の1781年建立で、台東区指定有形文化財。
高台の上にある本堂は拝殿・幣殿・本殿で構成された権現造の神社社殿型で、戦後の鉄筋コンクリート建築。境内の東側にも参道はあるが、石段は通行禁止で、代わりにケーブルカーが整備されている。
待乳山はかつては真土とも亦打とも表記した。待乳の表記については「赤子に乳が出ずに困っている母親の前を通りかかった弘法大師が、少し待たせて乳が出るようにした」との伝説がある。
大根と巾着
歓喜天(聖天)への供物は一般に歓喜団(巾着形の和菓子)、大根、酒である。
待乳山聖天もその象徴は二股大根と巾着で、境内には二股大根と巾着の意匠が多く見られる。大根は健康と夫婦和合・子孫繁栄、巾着は商売繁盛を表す。この巾着には砂金が入っているとも言われる。
また、待乳山聖天発行の『聖天様の功徳』には、歓喜団は貪欲、大根は瞋恚(怒りのこと)、酒は愚痴(迷いのこと)を表し、これら煩悩も裏を返せばそれぞれ菩提心、慈悲、方便(正しい知恵のこと)に繋がることから三種の供物を捧げて煩悩の転化を祈願する、とある。
表参道の石段の欄干には巾着と大根の意匠が刻まれている。
境内に安置された大根のレリーフ。大根の意匠が刻まれた石造物としては、他に境内東側の石灯籠がある。
本堂の前には一対の巾着型の天水桶がある。
本堂の西脇には大根の意匠のある天水桶が、東脇には巾着の意匠のある天水桶がある。
歓喜地蔵尊の香炉は巾着型。このほか、本堂の香炉も巾着型である。
大般若講 大根まつり
1月7日に催される大根まつりは待乳山聖天で最も特徴的な祭礼。午前11時より本堂で大般若法要を行い、その後、お神酒と聖天様に清められたお下がりの大根を用いた風呂吹き大根が参拝者に振る舞われる。また待乳山聖天はかなり神社に性格が近い寺院なので、時期的に初詣とも重なり、初詣客も多い。この行事についての詳細は「待乳山聖天 大根まつり」の記事を参照。
待乳山聖天は三大聖天の一つに名が挙げられることがある(ただし他所がそう主張してるのであって、待乳山聖天自身は主張していない模様)。なお、日本三大聖天を名乗るまたは名を挙げられる寺院は、待乳山聖天を入れて日本に少なくとも7寺はある。