水稲荷神社
水稲荷神社は、東京都新宿区の、甘泉園公園に隣接する稲荷社。甘泉園公園とともに、都電荒川線の面影橋停車場からは徒歩3分、東京メトロ東西線の早稲田駅からは徒歩10分の位置にある。
平安時代の天慶4年(941年)、平将門を討伐したことで有名な藤原秀郷が、現在早稲田大学の敷地となっている旧社地に創建。昭和38年、旧社地から清水徳川家下屋敷跡である現在地に遷座した。このとき、旧社地にあった富塚(古墳)および最古の富士塚とされる高田富士も移された。
高田富士は、江戸時代中期の1780年に築造された江戸最古とされる富士塚を、昭和38年の遷座の際に旧社地から移したもの。ただし遷座のとき高田富士は失われ、現在の富士塚は新造されたものととらえる者もおり、その立場からは富塚富士とも呼ばれる。富士塚の一合目には里宮の、五合目には小御岳神社の、頂上には奥宮の祠がある。
この富士塚は通常は登拝できないが、7月に催される冨士祭(海の日およびその前日)に登拝が可能。
根巻(鳥居の足元部分)が擬木となっている少し変わった鳥居もある。
茶室聴松亭は清水徳川家の遺構。遷座の際に甘泉園より移築された。また境内社三島神社は清水徳川家の守護神であった。
社殿は遷座時に建造された鉄筋コンクリート建築。
社殿背後にある冨塚古墳もまた、遷座の際に旧社地から移された。稲荷が祀ってある。
宮神輿は大正11年製作。
年中行事
当社の主な行事としては、以下のようなものがある。
初午祭
旧暦2月初午の日にはオビシャ神事(矢を射てその年の豊作などを占う神事)が行われる。この行事に関する詳細は「水稲荷神社 初午祭」の記事を参照。
冨士祭
7月の海の日とその前日には、前述のように高田富士が山開きされ登拝可能となる。この際、納涼盆踊りも催される。この行事に関する詳細は「水稲荷神社 冨士祭」の記事を参照。
例大祭
当社の例大祭は9月上旬で、三年に一度の大祭では本社神輿が渡御。この行事に関する詳細は「水稲荷神社 例大祭」の記事を参照。
宮元講の大神輿と小神輿は、そこそこ珍しい八棟造。
冬至祭
12月の冬至の日から翌年の節分まで、近くの穴八幡宮および放生寺と同じく、一陽来復守を授与。
関東稲荷総領職
『東京都神社名鑑』によると、江戸時代中期の天明8年(1788年)、京都御所炎上の折に当社の祭神が翁姿で現れ防火に努めたので関東稲荷総領職を賜ったという。
関東の稲荷の総社を名乗った神社としては、北区の王子稲荷神社と文京区の妻恋神社が有名であるが、水稲荷神社はほとんど知られていない。その他、中央区の鉄砲洲稲荷神社も関東総司稲荷神社を称したという。
明治の神仏分離までは、宝泉寺(西早稲田1-1-2)が別当寺であった。
甘泉園公園
甘泉園公園は、水稲荷神社に隣接する小規模な日本庭園。
安永3年(1774年)に徳川御三卿の清水徳川家の下屋敷として整備された。なお、徳川御三卿(清水・田安・一橋の徳川家)は、徳川御三家(尾張・紀州・水戸の徳川家)とは全くの別物である。
明治時代は旧陸奥中村藩主家の相馬子爵の邸宅となるが、昭和13年に早稲田大学の所有となる。戦後、早稲田大学のキャンパス拡張の際、一部は水稲荷神社の境内と交換し、残りは東京都に売却され都立公園となり、後に新宿区に移管された。
紅葉ライトアップ
甘泉園は紅葉の季節には夜間ライトアップされる。この行事に関する詳細は「甘泉園公園 紅葉ライトアップ」の記事を参照。